実は一度も全部捨てない。与野本町「大吉」に47年受け継がれる継ぎ足しタレの話

あれこれ

いつもありがとうございます。
やきとり大吉与野本町店の浜田です。

梅雨が明けると、厨房の温度がぐっと上がります。焼き場の熱、グリラーの熱、外の湿気。この時期は塩加減の調整がとくに難しく、毎日少しずつタレの状態を確認しながら仕込んでいます。

そういえば先日、常連のお客さまにこんなことを聞かれました。「タレって、たまに全部作り直すんですか?」と。

答えは——一度もありません。

今日は、普段カウンター越しにはあまり話さない「継ぎ足しタレ」のことを、少し詳しく書いてみようと思います。

こんな方におすすめ

  • ✅ 「やきとり大吉」のタレがなぜ他と違うのか気になっている方
  • ✅ 継ぎ足しタレの本当の意味を知りたい方
  • ✅ 与野本町で本格やきとりを楽しめるお店を探している方
  • ✅ チェーン店とは一線を画す、職人の手仕事に興味がある方
  • ✅ 大切な人と「記憶に残る一杯・一本」を楽しみたい方
実は一度も全部捨てない。与野本町「大吉」に47年受け継がれる継ぎ足しタレの話 | やきとり大吉与野本町店

1977年から一度も「全部捨てて」いない、ということ

やきとり大吉の創業は1977年(昭和52年)12月1日。今年で48年目を迎えます。

継ぎ足しタレというのは、使った分だけ新しい原材料を足して、ずっと同じ器の中で育て続けるものです。つまり、今日この瞬間に当店のタレの中には、創業当時から受け継がれてきた「記憶」が少しずつ溶け込んでいる。理屈としてはそういうことになります。

ただ正直に言うと、私がこの与野本町に店を構えたのは10年ほど前のことで、タレの歴史の全部を私一人で作ってきたわけではありません。大阪で2店舗、京都で1店舗、東京で1店舗——計4か所の修行先を経て、それぞれの師匠から受け継いだタレが、今の当店のタレのベースになっています。

修行中に感じたことがあります。タレって、お店の「人格」に似ているな、と。

甘みの出し方、醤油の選び方、どれくらい煮詰めるか。師匠ごとに微妙に違う。それでも根っこにある「おいしくしたい」という気持ちは、どこの店でも同じでした。私はそれを受け取って、今もここ与野本町で継ぎ足し続けています。

タレは「育てるもの」だと気づいた日

修行を始めた頃、先輩から「タレには触るな」とよく言われました。最初は意味がわかりませんでした。触らないと管理できないじゃないか、と思っていたんです。

でも何年か経って、ようやくわかってきた。

タレに何百・何千本もの焼鳥をくぐらせていく中で、鶏のうまみが少しずつ溶け出し、タレ自体が変化していく。余計に手を加えれば加えるほど、その積み重なりが壊れる。だから「触るな」というのは「信じろ」という意味だったんです。

当店のタレは現在11年目。修行先から持ち帰った味を土台に、与野本町という土地で毎日焼鳥をくぐらせながら、今もゆっくりと成長しています。お客さまの口に触れるたびに、少しずつ変わっている。それが継ぎ足しの本質だと思っています。

だから私は、タレが「完成した」とはまだ一度も思っていません。

✓ ここまでのポイント

  • やきとり大吉のタレは創業1977年から一度も全部捨てたことがなく、師から弟子へと受け継がれてきた。
  • 当店のタレは大阪・京都・東京4店舗の修行で受け継いだものをベースに、与野本町で11年間継ぎ足し続けている。
  • 継ぎ足しタレは「完成するもの」ではなく「育て続けるもの」。毎日の焼鳥がタレをつくる。

塩加減は「目視」だけでは決めない理由

タレの話だけでなく、塩についても少し。

当店の塩串には、ヒマラヤ岩塩を使っています。ミネラルを豊富に含んでいて、塩辛さだけでなく、口の中でほんのりと旨みと甘みを感じる。焼鳥との相性がいいんです。

ただ、塩は難しい。

夏と冬では、湿度が全然違います。湿度が高い季節は塩が溶けやすく、同じ量を振っても仕上がりの塩気が変わってくる。なので私は、毎日必ず自分の焼鳥を試食するようにしています。

「え、自分の料理を食べていない職人なんているの?」と思うかもしれませんが——実は、けっこういます。長くやっていると感覚が固まって、「昨日これでよかったから今日も大丈夫」という思考になりがちなんです。それは怖いな、と私は思っています。

目で見て、鼻で嗅いで、最終的には自分の舌で確認する。その日の状態を自分の感覚でつかんでから、お客さまに出す。それが最低限の誠実さだと思っています。

「変わらない味」を守ることと、「育てること」は矛盾しない

よく「ずっと同じ味ですね」と言っていただきます。それは嬉しい言葉です。

でも実は、毎日微妙に変わっています。タレも、塩加減も、焼き加減も。完全に「同じ」は、ありえない。

それでも「変わらない」と感じてもらえるのは、おそらくその変化の幅が「おいしい」の範囲内に収まっているからだと思うんです。軸がぶれていない、ということ。

タレには47年分の記憶があって、私には延べ50万本を超える焼きの経験があります。その蓄積が、日々の判断の「軸」になっている。だから少しくらい季節が変わっても、湿度が変わっても、大きく外れない。

逆に言えば、経験が浅いうちはこの「軸」を保つのがとても難しかった。修行時代に先輩の焼きを何百回も見て、タレの状態を毎日確認して、やっと少しずつわかってきた感覚です。

与野本町に店を構えて10年。ここで積み重ねてきたことが、タレにも、焼きにも、少しずつ刻まれていると信じています。

一本の串が届くまでに、どれだけの手間があるか

最後に、タレだけでなく仕込み全体についても触れておきます。

当店は毎日、その日の分だけ手仕込みをしています。冷凍・解凍を繰り返した鶏肉は使いません。新鮮な鶏肉を仕入れて、部位ごとに最適なサイズにカットして、串に刺す。

このとき、手袋と指サックを使い、保冷剤で鶏肉を冷やしながら手早く作業します。手の温度で鶏肉が温まると、鮮度が落ちるんです。見た目には伝わりにくい部分ですが、口に入ったときの「みずみずしさ」に関わってくる。

カットのサイズも、実は試食を重ねて決めたものです。大きすぎると火が通りにくく、小さすぎると食感が失われる。「最初の一口からおいしい」と感じてもらえるサイズを、自分の舌で確認しながら設定しています。

タレの話から始まりましたが、仕込み・味付け・焼きの全工程が繋がって、ようやく一本の焼鳥になる。そう考えると、タレだけが特別なわけじゃなくて、全部が「継ぎ足し」なのかもしれません。毎日の積み重ねが、今日の一本を作る。

まとめ:与野本町で、47年分の一本を

継ぎ足しタレというのは、派手な話ではありません。毎日少しずつ足して、毎日状態を確認して、毎日焼鳥をくぐらせる。ただそれだけのことを、ずっと続けている。

当店はJR埼京線の与野本町駅から徒歩4分、さいたま市中央区下落合にある小さな焼鳥屋です。カウンター6席とテーブル席を合わせて18席。夜17時から開いています。

一人でふらっと立ち寄っていただいても、家族みなさんでいらしていただいても、もちろん仲間と集まっていただいても構いません。お子さま連れも歓迎しています(完全分煙、独立した喫煙ブースあり)。

タレの話が気になった方、ぜひ一度、カウンター越しに串を受け取ってみてください。言葉より先に、口が答えを出してくれると思います。

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今日も大吉な一日を🏮